無名ガレージ/フラットロック・バンドを集めたコンピレーションの裏ジャケに、短い説明文とともに小さく添えられていそうな割と冴えないモノクロのバンド・フォト。アメ車のボンネットを持ち上げてポーズを決めますは、左からトニー・コンラッド、ウォルター・デ・マリア、ルー・リード、ジョン・ケールの面々。64年、The Primitivesがシングル盤The Ostrichをリリースした頃のひとコマ。そう、のちのVelvet Undergroundの原型。
コンラッドとケールは言うまでもなく当時ラ・モンテ・ヤングの永久音楽劇場に参加しており、デ・マリアはUCでラ・モンテの学友、リチャード・マックスフィールドから電子音楽やコラージュを学びつつやがてミニマル・アートやインスタレーションの大家として認められていくことになる。たしか波の音にドラムを被せただけとかコオロギの鳴き声のみの音源も制作していた(そういえばオウガの連中が昔、直島行った時に常設してあるデ・マリアのインスタレーションを観てきたと言っていた)。
つまり、マトモなロック・ミュージシャンはルーしかいなかったが、そのルーとてバッタもん専門レーベルPickwickの雇われソングライターの身分で、会社には採用されなかった「heroin」みたいな曲を書き溜めていた。
その後、同じくラ・モンテのところに居たアンガス・マックライズとルーの友人スターリング・モリソンが参加してVUが結成される、というのが誰もが知っているVelvet Underground結成物語だが、近年発見されたのであろうこの一枚の写真は彼らのその出発点を、百万語を費やすより遥かにヴィヴィッドにとらえている。
ご存知の通りジョン・ケール以外は既に全員鬼籍に入っているが、それぞれの足跡を鑑みるにこの組み合わせはやはりとんでもないし、いわゆるロック・バンドの起点としては古今東西類を見ない。