路傍の石

  60年代ガレージパンク・コンピレーションの嚆矢として語り継がれるNuggetsの日本盤が発売された。米60年代ガレージ、サイケを語る上で基本中の基本であるこのアルバムが国内初CD化とはいささか意外な気もするが同時に日本独自編集のVol.2、Vol.3が発売されるのは快挙と言っていいかもしれない。
  ご存知の通りNuggetsは、後にパティ・スミス・グループで彼女を長きにわたり支えて行くことになるミュージシャン兼音楽ジャーナリスト、レニー・ケイが編集し米エレクトラから72年という比較的早い時期にリリースされた。その後70年代末以降のPEBBLES、BOULDERS(鉱物的なイメージが多いのは玉石混合の意味合いでは?というのは岡田くんの説)など数え切れないほどの多様なガレージ・コンピのコンセプトに多大な影響を与えたのも周知の事実だろう。オリジナル発売当時はハードロック、プログレ、フォークロックなど日本でいうところの所謂ニューロック・アートロック全盛期でその意図はほとんど理解されず、セールス的にも芳しくなかったようだが76年にグレッグ・ショウの尽力によって米サイアーから再発された時には機も熟していたのか、折しも各地で勃興し始めていたパンクムーヴメントに少なからず影響を与えた。それは60年代のローカルなガレージパンクに単なるオールディーズとしてではない特別な意味合いがあるということを多くの人々が感じ取り始めた瞬間だった。
  
  今回は前述のようにオリジナル・エレクトラ盤のストレート・リイシューと共に日本編集の続編2タイトルがリリースされたのだが、大手レーベルからの正規盤ということで原盤の権利関係がクリアできず収録できなかったタイトルが山のようにあったということは旧来の知己で今回の編纂者である伊藤秀世氏のライナーにつまびらかだ。その事情もあってかVo.2とVol.3はそれぞれ米英混合というやや変則的な編集になっている。しかしながら79年にヨーロッパで100枚限定でリリース(77枚説もあり。もちろん非正規盤)、その後何回も再プレスされることになるアシッド・パンク系のキラー・コンピ、Acid Dreamsの冒頭に収録され我々の度肝を抜いた(当時はLitterの変名と噂されていた)White LightningのWilliam、The DeepやFreak Sceneのラスティ・エヴァンス関係でのちにCrampsやNomadsを始め多くのカヴァーヴァージョンを産んだThe Third BardoのI’m Five Years Ahead Of My Timeなど名曲の数々が正規収録されたのは、快挙と言って差し支えあるまい。もちろん、執念のCharlatans国内初登場も。
最近はめっきり少なくなった、ライナーノーツの本道とも言うべき手間と時間をかけたサーチがしっかり行き届いた入魂の解説も一読の価値あり。

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