部活

  暮れも押し詰まったというのに迷えるオヤジが4人、いつもの新宿Tに忘年会よろしく雁首そろえて集合。定期的に開かれているとはいえ、4人が揃うのは夏の原村出張会議以来。その折に会議名が付与されたがどうにもこうにも発語しづらく、集まる人数によって「首脳会談」「本会議」「有識者会議」などと名付けられたもののこちらも使われたことはない模様。
  
  さて、いずれも音楽業界ではそれなりに知られており、知識と経験の豊富さはもちろんキツい一家言を忘れない御歴々なので毎度毎度その議論におけるハードルは上がるばかり。もちろんここでは今年世間が褒めちぎった作品だろうが近しい友達の作品だろうが果ては作者を眼前にしていようが躊躇なく俎上に挙げられ一刀両断にされた後、即座にゴミ箱にぶち込まれる。お互い褒めあって気持ち良く、などというヌルさは誰も持ち合わせていないからだが、今夜も年末の音楽誌では本年度の名作とされた盤が次々と批評の対象として晒されていく。
  夜が更けるにつれ話は観念論から80年代~現在に至るサブカルチャー論、日本の音楽ジャーナリズムの酷さ、ちょっと期待してたけどダメだった人の話、しまいには「ストーンズで好きなアルバムは」とか「同じ黒人なのにジミヘンとマルコム・ムーニーとスライの差異とは」などと、いにしえのロック喫茶もかくや、というべきオヤジ度100%の議論に場は更にヒートアップ。お客がはけるとD店長もたまらず参戦し泥仕合を繰り広げながら毎度のことながら気づくと朝4時半。結局「近い将来、一顧だにされていない戦前ブルースや初期のR&Rは、やんちゃ系ではなくアタマのキレる少数の若者らにカッコよくクールなものとして認識されはじめ、手法やスタイルの模倣ではなくその本質や感触だけを拠り所にした音楽を作ろうと模索する奴らが出てくるだろう」という結論に落ち着いた(笑)

  店じまいを待って睡魔と闘いながら向かうのはおなじみのカレー屋。会議終了後、ここでカツカレーを食べるのがノルマとされているのだ。まるで男子校の部活のシゴキのようでもあるが、朝5時ぐらいに素性の知れないオヤジがわらわらと入店し「カツカレー五つ」と注文しカウンターで一列に並んで一心に食べている図はまことに壮観である。酔いも覚め腹も朽ちたオヤジ5人は若干の胃もたれを感じつつ1月の新年会での再会を約束して三々五々タクシーに乗り込み帰路につくのだった。

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