幕間

 客入れはチェット・ベイカー・シングス、演奏終了時はタイニー・ティムのWhat The World Needs Now Is Love、これは80年代の最初のライブの時から決めてあってほとんど変わらなかった。
ただでさえ少なかった客の中でそれに気づいた人がどれだけ居たかはわからない。

 それは僕(ら)の立ち位置、そしてどこからやって来たのかをしれっと提示するある意味わかりやすい暗号としてあったので人任せにして無関係な曲を垂れ流すわけにはいかなかったし、その間に挟まれた僕らの演奏はそれを証明せんとする手立てのひとつだったとは考えられるが、結局それ以上でもそれ以下でもなかった。
と、今となっては思う。

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