80年代はじめに横浜から杉並に引っ越してよく遊びにいっていた店があった。下北沢の西口近くにあったMAXIという当時で言うカフェバー(?)なのだが打ちっぱなしのコンクリートの店内には新品や中古のレコードもけっこう置いてあって、そのテの店には必ずあった大型のビデオモニターもあり、よくSPKのDespairが流れていた(そういえばTGのHeathen Earthの映像を初めて観たのは西麻布のニューウェイブ・ディスコ、CLiMAXだった)。
店長の宮沢さんは以前はレナード・コーエンなどSSW好きだったらしいがパンク、ニューウェイブにヤラれて以降、奥さんもろともY’s系の細身の黒ずくめファッションに転向していた。その時代、パンク、ニューウェイブにハマってライフスタイルまで一変したひとが沢山居た。
いつも昼過ぎから夜までレコードを聴いておしゃべりしたり友達とビデオを観ながらダラダラしていたのだが、奥さんが当時活動を始めたばかりの宮西計三バンドに入れこんでおり、その関係でバンドのメンバーやラリーズ系のひとたちなども結構来ていたようだ。宮西バンドのミーティング的な会合に居合わせたこともあるけど、その後何年かして一緒にやることになる松谷や栗原もその場に居たんだろうなと想うと不思議な縁を感じる。
扱っていたレコードもアヴァンギャルド系やノイズの新譜が多かったので後期M.B.などはここで買った。Plain Truthを買って帰った夜、聴きながらここ何年か続いてきたものが終わるんだなという漠然とした感覚に襲われて、実際自分の中ではこの時を境に、というのがあったのだがそのことはまたいつか。(ちなみにPlain Truthと一緒に買ったのがPsychedelic Unknowns vol.1だった)
記憶が正しければ宮沢さんはしばらくしてMAXIをたたんで渋谷にZESTをオープンしたはず。ここはカフェとかではなくニューウェイブ、ノイズ系の輸入・中古レコードショップだったがそれも割と短期間でひとに譲って銀座、高田馬場などを転々としながらレコード店を続けていたがしばらくして郷里の北海道に帰ってしまったときく。その後のZESTが90年前後の渋谷系のブームとともに有名店になっていったのはご承知のとおり。