順列と組み合わせ

 山辺くんや二見くんに誘われて年に何度かDJをやることがある。元々はもちろんDJなどやったこともなくて、数年前山辺くんに誘われてから見様見真似でやりはじめた。
 と言っても特殊技能もワザもないので好きな曲を適当につなげてかけるだけなのだが、先日にせんねんもんだいの新作リリースパーティーでzeloneよりお声がかかりリキッドルームの2Fでやることになった。
 慣れない場所で多少緊張したがつつがなく終了、来場していたかよちゃんと雑談しながら一服してたとき、たまにUstとかで観るDJってなにを忙しそうにツマミいじってるんだろうね、こっちはレコードかけたら次のをかけるまでやることないのに、という話になった。そういえば坂本もそう言ってたな、なにやってるんだろ。かよちゃんは、暇だからただツマミいじってるだけでしょ?という。まあ本当は違うんだろうけど、そうだよね多分、ということでお互い納得した。
 自分がDJをやるときは基本仲間内の酒飲み話のBGM的な意味合いの場合が多いので当たり障りの無いフツーにいい曲、楽しめる(と自分がおもう)曲ばかりで、いろんな意味でヤバいレコードや、ちょっとコレは、的なレコードはかけないようにしている。
 
 昔、灰野さんがウチによく遊びに来てた頃、昼12時から夜12時過ぎまでずっとレコードかけながらああだこうだと延々と、あ、それ知らない、お、それそれ聴かせて、なんて飽きもせずにやってたが、もう電車なくなるのにな、と心配してると三浦くんがクルマで迎えにくるのだった。
 余談だがゆら帝のこともその頃、灰野さんから初めてきいた。「最近なんか面白いバンドない?対バン探してるんだけど」「ゆらゆら帝国ってバンド知ってる?」「知らない」「4人組でギター2人のアンサンブルが面白いよ、ちょっとクイックシルバーぽくて」「へー、じゃあ今度みてみようかな」「でもねえ、音は面白いんだけどステージでヘンな事するんだよね」「….」  まだ4人編成だった頃の話だ。
 逆に灰野さんちに遊びに行く時はお返しにと僕の知らないレコードを教えてくれるのだが、だいたいイニシエーション的な質問があって、「石原くんは○○知ってる?XX聴いてるよね?誰それのレコードでいいのはどれだとおもう?」正解すると「そう!それなんだよ、じゃあ…他のひとには教えないでよ」といって教えてくれる。一回レッドの誘導尋問に引っかかってうっかりひとつ漏らしてしまった事があり、あとでえらく文句を言われた。
 モノには順番があるというのはよく判るし、のちにゆら帝がブレイクしたときに邦楽ではゆら帝が好きで、洋楽はピーター・アイヴァースとエリカとシルバーアップルズとスーサイドが好きです(他はよく知りません)みたいなファンが大量に湧いて、あげくそのスジ(コアな音楽マニア)から皮肉られて坂本が言うんじゃなかったとこぼしてたこともあった。
 ジムもどこかで言ってたけど、その音楽の固有の文脈がわからなければそれは単なる情報、知ってるだけ、聴いただけ、経験ではないということだろう。もちろん、そこを起点に自分なりに掘っていってまったく違う地平に達した人たちもいるだろうから功罪相半ばするといったところか。
まして、音楽をなりわいにしてるんじゃないんだからどういう偏った聴き方をしようと勝手だろう、このひとでなし!、などといわれなき非難中傷を浴びせられた日には、そう言われてしまえばミもフタもない、というか御説ごもっとも、「へえへえひとではございやせん」と捨てゼリフのひとつも吐きながら尾羽打ち枯らして退散するしかない。
 でもやはり自分なりの文脈と嗅覚で音楽を聴いて来た人と話をするのはたとえ基本的な趣味の違いがあったとしても楽しいもので、ここ10年ぐらいで色んな人と知り合ったが今も定期的に交流があったり一緒に音楽を作ったりするのはそういう人達かな。

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